抑〻そもそも)” の例文
云うが早いか、抑〻そもそも、どうした事なのであろう、相木熊楠は、そのまま鞭を駒にあてて、戦場からたかのように何処かへけ去ってしまった。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
反射運動みたいな習性、才気ある女云々、そうとり出して読むと何かおどろかれるようですが、私はこの頃ペニイのこと抑〻そもそもからね、こう考えるのです。
美代子さんはこの夫婦の間の一粒種、それも比較的年が寄ってからの子だから、生れ落ちた抑〻そもそもの初めから大存在だった。その代りほかのものは皆小さい存在だ。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
雪子の結婚がおくれているのにしびれを切らしていることは事実で、抑〻そもそもあの新聞の事件にしても、あの時分に雪子が既に縁づいているか、直きに縁づくような形勢であったら
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
抑〻そもそも内匠頭は、本藩は大名中の大身、身は、五万石の城主、清廉温厚せいれんおんこうの聞えはあるも、未だ今日まで、悪評のない人物です。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抑〻そもそも婚姻の事たる太古たいこひといまだ罪を犯さざりし時より神の制定し給えるものにて、主エスはガリラヤのカナに催されし婚筵こんえんつらなり、最初の奇蹟を以て之を祝し給い
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
抑〻そもそもは、あなたへ特別心づけて本を送っているとか、便りをしているとか聞かされているので、それにC子さんとのつながり、Rちゃんとのつながりもあり、出て来て病気で
こう布陣を押出して見せているのに——抑〻そもそも、戦う意志は無いのか、妻女山の無表情は、依然として、きのうも今日も、無表情のままなのである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の生活の批判の焦点も出来たので、いよいよ自分の恋愛の抑〻そもそもから書く決心をした。
「いゝえ、電信柱なんか勘定するのが抑〻そもそも余計なんですよ」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と彼は思っているのであろう。悲憤慷慨ひふんこうがいということが抑〻そもそもきらいなのだ。涙をすらうっかりは買わない内蔵助なのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の事情として、今二つに分けて考えるのが抑〻そもそもという点も、その心持のぐるりを細かにしらべて見れば、やはり貴方が指し示して下すった点の重要さがわかります。本当にありがとう。
抑〻そもそも其方そのほうだいそれた悪事を目企もくろみはじめたのは、いうまでもなく、龍山公のお血統ちすじの詮議を依頼されてからのこと。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抑〻そもそものはじまりは『昼夜随筆』の中にある、今日の文学としての三二—三七頃までの概観と、次はそれをふえんしてかいた百枚の未発表の昭和十二年までの文学史と、その上にあれがあるのですから。
抑〻そもそも、これは、九州肥後の国、阿蘇あその宮の神主友成かんぬしともなりとはわが事なり。われまだ都を見ず候ほどに、このたび思いたちてのぼり候。またよきついでなれば播州ばんしゅう高砂たかさごの浦をも一目見ばやとぞんじ候
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、彼ほどな人が後世のために、余りに無名時代の自分の経歴を不明にまかせておいた事が、抑〻そもそも、史家の臆測をわずらわして諸説紛々今もはっきりしない結果になった唯一の原因だからである。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抑〻そもそもが、もう故太閤殿下の朝鮮役が、一つの時勢をかえている。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この一羽の窮鳥が、越後へ入国したのが抑〻そもそも端緒たんちょである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
抑〻そもそも、敵はまた、何を計るか?」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)