払拭ふっしょく)” の例文
郭淮かくわいの進言に面目をとどめた張郃ちょうこうは、この一戦にすべての汚名を払拭ふっしょくせんものと、意気も新たに、五千余騎を従えて、葭萌関かぼうかんに馬を進めた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度この思想にまで戻って考えることが、生活と娯楽という対立を払拭ふっしょくするために必要である。娯楽の観念の根柢こんていにも形而上学けいじじょうがくがなければならぬ。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
赤道に近いにも拘わらず印度洋を払拭ふっしょくして来る風が、多量の水蒸気を齎らすのに反して、北は西蔵チベット高原から吹きつける暑熱の乾燥した風であるために、南と北では
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
恋慕の情とを忘れてしまいたい、心の奥に映っているかの人の美貌を払拭ふっしょくして、煩悩ぼんのうを断ち切ってしまいたい、自分の行為は狂的に見えるかも知れないけれども、自分は今
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
のろわばあな二つだ!」と、かれは、いいながら、石塊せきかいげつけて、一げきのもとに、かえるもとかげももろともに粉砕ふんさいして、まえまわしい光景こうけい払拭ふっしょくしようとあせったのです。
『おしばい』とか『絵そらごと』とかいう感じを払拭ふっしょくすることができません。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
口にこそ出さなかったが、他の産業戦士と呼ばれる人々に対して抱いていた、嫉妬めいた感情も一時に払拭ふっしょくされた。その上軍需紙の原料は、何の煩わしさもなく真直ぐに組合へ送られてきた。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
だが八重の持って来た情報の重要さは、そんな感情をたちまち払拭ふっしょくした。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もし、そのクサビが打ってなかったら、秀吉と氏政とは、たちどころに聯盟れんめいを唱え、天正十三年にはもう徳川氏の名は東海から払拭ふっしょくされていたにちがいなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)