打粉うちこ)” の例文
凄艶な癆咳ろうがいの女と刀の姿とが、その美をぎ合って争うように見られたが、弦之丞は刀をやや手元へよせて、軽く打粉うちこをたたいていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから今度こそ帯のように長く展して行って打粉うちこを振って双方から畳んで、そのまままた展してまた畳んで三度あるいは四度位展します。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
打粉うちこをふって、例のやわらかな奉書の紙で、無雑作に二度三度拭うているのを、ピグミーは仔細らしくながめて
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
丁度七つさがりになりまして大伴の処へ参りますと、幸い蟠作も居りません、蟠龍軒独りで小野庄左衞門を殺して取った刀へ打粉うちこを振って楽しんで居ります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今から十一、二年前のことだが、私は偶然のことから気がついて生薬屋きぐすりやからいぼたを買って来た。ちょうど刀の打粉うちこのように金巾かなきんの袋に入れてレコード面にたたきつけて拭いて見た。
毎日同じ時刻に刀劍に打粉うちこを打つて拭く。體を極めて木刀をる。婆あさんは例のまま事の眞似をして、其隙には爺いさんの傍に來て團扇であふぐ。もう時候がそろ/\暑くなる頃だからである。
ぢいさんばあさん (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ちょうど固さも捏ねた饂飩位にしてこの通り展し板の上へ取って打粉うちこいて展し棒で少しずつ展して行きますが饂飩のように四方へ広く展しません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
馬には糧草ほしぐさを喰わせ、また、納戸部屋なんどべやのすみで、ただひとり刀をあらため、打粉うちこを打っているさむらいもあった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎日同じ時刻に刀剣に打粉うちこを打ってく。たいめて木刀をる。婆あさんは例のまま事の真似をして、そのすきには爺いさんのそばに来て団扇うちわであおぐ。もう時候がそろそろ暑くなる頃だからである。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二時間過ぎてみると膨れて柔くなっていますからそれを板の上へ取って打粉うちこ代りにメリケン粉を振かけてモー一度十分間ばかりよくでっちるとちょうど好い加減な柔かさの物が出来ます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
慈悲、仁心、刀に打粉うちこいたすが如くせよ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かけて今の通りな温い処へ二時間置くと大層膨れて柔くなっていますから再び板の上へ取って打粉うちこ代りにメリケン粉を振かけてモー一度十分間もでっちるとちょうどいい柔かさの物が出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
『のぶ、打粉うちこを出せ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)