打着ぶつ)” の例文
と何を狼狽うろたえたか、女房はまた顔を赤くした。同時に、要するに、黄色く、むくんだ、亭主の鼻に、額が打着ぶつかったに相違ない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此処で又紛々ごたごたと入乱れ重なり合って、腋の下から才槌頭さいづちあたま偶然ひょっと出たり、外歯そっぱへ肱が打着ぶつかったり、靴のかかと生憎あいにく霜焼しもやけの足を踏んだりして、上を下へと捏返こねかえした揚句に、ワッと門外もんそとへ押出して
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
本人ほんにんくらんでるから、なにうしたかはわからない。が、「なにをするんだ。」とはれたから、無論むろん打着ぶつかつたにちがひない、とおもつたんです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何しろ、この明りでは、男客にしろ、一所に入ると、暗くて肩も手もまたぎかねまい。乳に打着ぶつかりかねまい。で、ばたばたと草履ぞうりを突っ掛けたまま引き返した。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しっ、」と押えながら、島野紳士のセル地の洋服のひじを取って、——奥を明け広げた夏座敷の灯が漏れて、軒端のきばには何の虫か一個ひとつうなりを立ててはたと打着ぶつかってはまた羽音を響かす
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とその顔へ、打着ぶつけるように声を懸けた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)