手足しゅそく)” の例文
大人たいじん手足しゅそくとなって才子が活動し、才子の股肱ここうとなって昧者まいしゃが活動し、昧者の心腹しんぷくとなって牛馬が活動し得るのはこれがためである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
子澄が曰く、しからず、燕はあらかじめ備うること久しければ、にわかに図り難し。よろしく先ずしゅうを取り、燕の手足しゅそくり、しこうして後燕図るべしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おお見よ! その船の水夫達を! 彼等はいずれも骸骨の顔と骸骨の手足しゅそくとを働かせて、老人の船長を囲繞しながら、船を操っているでは無いか!
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
手足しゅそくを労するを得ず故に世に為すことなしと言うや、汝高壇にたちて説教し得ず故に福音を他に伝うるを得ずと言うや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
流れに任せた軽舸の中では、法月弦之丞の目と手足しゅそく、その時怖ろしく迅速に働いていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今かかる達人の見地よりせば、いわゆる道のためには喪身失命そうしんしつみょうを辞せずで、手足しゅそくなお断つべし、いわんやこの肉体を養うための衣食のごとき、場合によってはほとんど問題にもならぬのである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
しかし恩地小左衛門は、山陰さんいんに名だたる剣客であった。それだけにまた彼の手足しゅそくとなる門弟の数も多かった。甚太夫はそこではやりながらも、兵衛が一人外出する機会を待たなければならなかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただ上部うわべだけはいかにも静である。もし手足しゅそくの挙止が、内面の消息を形而下けいじかに運びきたる記号となり得るならば、この二人ほどに長閑のどか母子おやこは容易に見出し得まい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
残酷の豎儒じゅじゅとなし、諸王は太祖の遺体なり、孝康こうこう手足しゅそくなりとなし、これを待つことの厚からずして、周王しょうだいせい王をして不幸ならしめたるは、朝廷のために計る者のあやまちにして
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
王城を囲める者も、首脳すでに無くなりて、手足しゅそく力無く、其兵おのずからついえたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)