いか)” の例文
子路いかり、見えて曰く、君子も亦窮する有るかと。子曰く、君子固より窮す。小人窮すればここらんすと。——衞霊公篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
此方こちの心が醇粋いっぽんぎなれば先方さきの気にさわる言葉とも斟酌しんしゃくせず推し返し言えば、為右衛門腹には我を頼まぬが憎くていかりを含み、わけのわからぬ男じゃの
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
従って、「子路いかまみえて曰く」に対応して「子貢、色を作す」という一句を挿入し、この場面とおよそ関係のない「予一以貫之」の問答をここにつらねることになったのである。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼が千歳村に引越したあくる月、M君は雑誌に書くりょうに彼の新生活を見に来た。丁度ちょうど樫苗かしなえを植えて居たので、ろく/\火の気の無い室に二時間も君を待たせた。君はいかる容子もなくしずかに待って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此品これをば汝はらぬと云うのか、といかりを底にかくして問うに、のっそりそうとは気もつかねば、別段拝借いたしても、と一句うっかり答うる途端、鋭き気性の源太はたまらず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここに於てすなわあいともに徒役を発して孔子を野に囲む。(孔子)行くを得ず。糧(粮)を絶つ。従者病みて(起)つあたわず。孔子、講誦弦歌して衰えず。子路いかまみえて曰く、君子も亦窮するあるか。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
之にしたがうもいまだ其せいを必せず、之にさからうも未だ其死を必せず、あい賀蘭山前がらんさんぜんいささかもっ博戯はくぎせん、吾何をかおそれんやと。太祖書を得ていかること甚だしく、しんに兵を加えんとするの意を起したるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と此方の心が醇粋いつぽんぎなれば先方さきの気に触る言葉とも斟酌せず推返し言へば、爲右衞門腹には我を頼まぬが憎くていかりを含み、わけの解らぬ男ぢやの、上人様はきさまごとき職人等に耳は仮したまはぬといふに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)