態度ようす)” の例文
私は、何よりもそのきとした景気の好い態度ようす蹴落けおとされるような心持ちになりながら、おずおずしながら、火鉢ひばちわきに座って
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
繰拡くりひろげたペイジをじっ読入よみいつたのが、態度ようす経文きょうもんじゅするとは思へぬけれども、神々こうごうしく、なまめかしく、しか婀娜あだめいて見えたのである。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もとより拘引の理由なぞを洩しそうな態度ようすではないので、手も力も尽き果てた区長は大急ぎで町へ出て弁護士の家へお百度詣りを始めた。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それにこの男の静な、冷い態度ようすと言ったら——それは底の知れないような用心深いところがあって、一歩ひとあしでも馬に無駄を踏ませまいと、たくらんでいるらしい。源は大違です。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そう云う令嬢の眼付を見ると、どうやら父親の無罪を確信しているらしい態度ようすである。吾輩はグッと一つ唾液つばみ込んだ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お宮のふてぶてしい駄々だだを見たような物のいい振りや態度ようすに、私は腹の中でむっとなった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
するとその態度ようすをジット見て御座った若旦那は、オモヨさんの肩に手をかけたまま中腰になって硝子ガラス雨戸越しにそこいらをジロジロと見まわして御座るようでしたが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は、「何だ! 昨夜はあんな思い詰めたようなことを言って、今朝の此のフワ/\とした風は? ……」と元の座に戻りながら、不思議に思って、またしても女の態度ようすを見戍った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
前の藤六から以来このかた小金こがねの溜まっているような噂が立っているそうで御座いますから、いつも油断しませずに、出入りのお客の態度ようすに眼を付けておりましたお蔭で御座いましょう。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まだ早いと云うて逃げようとされますのを、お八代さんが無理矢理に着せて、あとを見送りながら、さも嬉しそうにして涙を拭いておりました態度ようすが、今でも眼にすがっております。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もっともこの日に限って西村さんは、何となく気が進まぬらしい態度ようすで、自動車から降りると、泣き出しそうな青い顔をして尻込みをしているのを、ハイカラ美人さんが無理に手を引っぱって
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けれども、そのうちにアヤ子の方も、いつとなく態度ようすがかわって来ました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お医者側では手数がかからぬ。家族連中の話の模様や。又は患者の態度ようすを眺めて。書物拡げて照し合わせて。似合相当の名前を付けたら。それで診察おわりというので。赤い煉瓦れんがち込むだけだよ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)