怪異かいい)” の例文
里の者たちは、そでひき合って、クスクス笑いあった。なぜかといえば、片鼻かたはなそげている顔が、いかにも怪異かいいに見えたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この二つの怪異かいいのくみあわせの、ぶきみさに、人々はゾーッとおびえた目を見かわして、ただ立ちすくむばかりでした。
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この清水山にはいろいろの怪異かいいがあって、迂濶にはいると禍いがあるということになっているので、長い堤のあいだでも、ここだけは誰も近寄るものがない。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
電車で帰って停車場ていしゃばを出たところで一人で歩いている女を見て、それを襲おうとして怪異かいいを見たのであった。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いろいろな怪異かいいを見せて彼と彼の家族をおどかした揚句あげく、先に左平の妻と娘を殺し次に左平を殺した。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もっとも、乱波らっぱ(便衣隊)の暗躍は、こんどに限ったわけではない。足利家が幕府を都にすえてからは、のべつそれらの形なきものの口からちまた怪異かいいかれていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかつきを待って、覆布おおいがとりのぞかれると、その下から、地下戦車はすこぶる怪異かいいな姿をあらわした。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よく見ると、額堂の中には、少なくとも二十人以上と思われる人数が、あぐらをくみ、柱にもたれ、らんり、思い思いなかっこうをして怪異かいいな集合をしているのだった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死の世界ではなく、形こそ怪異かいいであるが、植物も繁茂はんもしている。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
近侍きんじをはじめ侍女こしもと薙刀なぎなた、八めんをつつんでワッと追いかぶさったが、雪ともつかぬひょうともつかぬふしぎなものが、近よる者のひとみに刺さって、見るまに怪異かいいな老婆のかげは、外曲輪そとぐるわの闇へ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
珍妙ちんみょうなる怪異かいいは、そのあとにはじまったのである。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこに大きな焚火たきびをしてかたまっている人間たちは、みな、羅生門らしょうもんの巣を追い出されてきたかのごとき異装いそう怪異かいいな男どもばかりであって、この寒いがれた冬の月の下に、野の枯草を積みあげて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怪異かいいは続く
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あやしいといってもこれほど怪異かいいなことはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
解けた怪異かいい
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)