御新造ごしんぞう)” の例文
狭い屋敷であるから、伊平は裏口からずっと通って、茶の間になっている六畳の縁の前に立つと、御新造ごしんぞうのおよねは透かし視て声をかけた。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
中でも私の心の上に一番不愉快な影を落したのは、近来はどこかの若い御新造ごしんぞうが楢山夫人の腰巾着こしぎんちゃくになって、歩いていると云う風評でした。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
由「これは御新造ごしんぞさん……これはどうも村上の御新造ごしんぞうさん、此処でお茶を売って居らっしゃるとは何様どんな探報者たんぽうしゃでも気が付きません……どうしてまア」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして抽斎に、「どうぞおれに構ってくれるな、己には御新造ごしんぞう合口あいくちだ」といって、書斎に退かしめ、五百と語りつつ飲食のみくいするを例としたそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
エモンを字のごとくイモンと読んできぬけたもん心得こゝろえ小説家せうせつかがあつたさうだが、あるわか御新造ごしんぞう羽織はをり幾枚いくまいこしらへても、実家じつかもんを附けるのを隣の老婢ばあやあやしんでたづねると
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
分限者ぶんげんしゃ御新造ごしんぞうさんで隠居さまがたを、お稽古人にもっていられる長唄や清元のお師匠がたには、ありがちの事ではございますもののわたくし風情ふぜいの、小唄の師匠にとっては、ほんに
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
昨夜ゆうべのことをくわしく訊きたいな、御新造ごしんぞう
「ええ。誰にも云っちゃあならないと、御新造ごしんぞうさまからも口止めされているんです」と、お安も云った。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
國「旦那に御新造ごしんぞうの世話をしたい、おっかさんも初孫ういまごの顔を見てえだろう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)