待設まちもう)” の例文
それは、花子との二重写しに依って、ようやく薄れて来たネネの面影が、又々生々しく甦って来、私の胸を騒がすような事件が待設まちもうけていたのであった。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
一の烏 いや、串戯じょうだんけ。俺は先刻さっきから思ふ事だ、待設まちもうけの珍味もいが、こゝに目の前に転がつた餌食はうだ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今にも何事か奇怪な出来事の起るのを待設まちもうけでもするように、ある者は静止し、ある者はうごめいているのです。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
待設まちもうけたる斉泰は、たゞちに符を発し使を遣わし、いて燕府の官属を逮捕せしめ、ひそか謝貴しゃき張昺ちょうへいをして、燕府に在りて内応を約せる長史ちょうし葛誠かつせい指揮しき盧振ろしんと気脈を通ぜしめ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
待設まちもうけた雲が来た。若い手代の幸作、同じく嘉助のせがれの市太郎、皆なうつった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二人の半日楽しみにして待設まちもうけた晩御飯はめちゃめちゃになりました。
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、一際ひときわ大きな句碑の前までたどりつくと、何かを待設まちもうける様に立止まった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)