形象かたち)” の例文
靈魂よ、汝の輪廓に這ひよる脆い華奢おしやれな獸の哲理を知れ。翼ある聲。眞實の放逸。再び汝はほろぶる形象かたちに祝福を乞はねばならぬ。
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃 (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
このあをじろい新月は、『王冠のかたち』であり、その王冠のいたゞいてゐるものは、『形象かたち無き形象かたち』(——ミルトンの『失樂園』)であつた。
針の痕は次第々々に巨大な女郎蜘蛛じょろうぐも形象かたちそなえ始めて、再び夜がしら/\と白みめた時分には、この不思議な魔性の動物は、八本のあしを伸ばしつゝ、背一面にわだかまった。
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自然そのままのけがれのない清純な女性の形象かたちをとってこの現世おつつよに存在している、いわばそれは若竹の精霊だ。微塵みじんの悪徳もなく、うるわしい天然の姿のままで。それはあの竹林の中に生きている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
彼の頭脳あたまを支配してゐる、種々いろいろ形象かたちと種々の色彩の混雑こんがらがつた様な、何がなしに気を焦立せる重い圧迫も、彼の老ゆることなき空の色に吸ひ取られた様で、彼は宛然さながら二十はたち前後の青年の様な足調あしどり
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あの形象かたちはどこへ過ぎたか
暁と夕の詩 (新字旧仮名) / 立原道造(著)
こるもいくその形象かたちぞや。
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
形象かたちを落す
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)