引締ひきし)” の例文
可哀あはれ車夫しやふむかつて、大川おほかはながれおとむやうに、姿すがた引締ひきしめてたゝずんだ袖崎そでさき帽子ばうしには、殊更ことさらつき宿やどるがごとえた。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、何処どこか見当の付かぬ処で、大きなおならの音がした。かの女の引締ひきしまって居た気持を、急に飄々ひょうひょうとさせるような空漠くうばくとした音であった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この一刹那せつなに阿Qは打たれるような気がして、筋骨を引締ひきしめ肩をそびやかして待っていると果して
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
三十人余りの会員を、充分引締ひきしめて行く力があります。
事業というものは片っぽうで先走った思い付きを引締ひきしめて、片っぽうはひとところへかじり付きたがる不精ぶしような考えを時勢に遅れないように掻き立てて行く。ここのところがちょっとしたこつです。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)