年中ねんじゅう)” の例文
ふん、もの値打ねうちのわからねえやつにゃかなわねえの。おんな身体からだについてるもんで、ねん年中ねんじゅうやすみなしにびてるもなァ、かみつめだけだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
淵明だってねん年中ねんじゅう南山なんざんを見詰めていたのでもあるまいし、王維も好んで竹藪たけやぶの中に蚊帳かやを釣らずに寝た男でもなかろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俺等は年中ねんじゅうに出て商売にやっていながら容易に儲からない。それを相場表ぐらいを頼りにして、遠くから電話をかけて儲けようってのは己惚が強過ぎる。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ねん年中ねんじゅう己の頭に浮かんでいる不思議なまぼろしがメリー嬢となって現れたように感じたのである。メリー嬢の持って居る「」は、己が明け暮れあこがれて居るものゝすべてゞあったのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それで坑夫となると請負うけおい仕事だから、が好いと日に一円にも二円にも当る事もあるが、掘子は日当でねん年中ねんじゅう三十五銭で辛抱しなければならない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なに日が射すためじゃない。ねん年中ねんじゅうかけ通しだから、のりの具合でああなるんです」と岡田は真面目まじめに弁解した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一だいちああ忙がしくしていちゃ、頭の中に組織立ったかんがえのできるひまがないから駄目です。あいつの脳と来たら、ねん年中ねんじゅう摺鉢すりばちの中で、擂木すりこぎき廻されてる味噌みそ見たようなもんでね。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なあにねん年中ねんじゅう思っていりゃ、どうにかなるもんだ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)