たいらか)” の例文
五百いおが藤堂家に仕えていた間に、栄次郎は学校生活にたいらかならずして、吉原通よしわらがよいをしはじめた。相方あいかた山口巴やまぐちともえつかさという女であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蝶吉はかの時無慙むざんなる介抱をした抱主の処置にたいらかなることあたわず、おさえ切れない虫は突走つッぱしって、さてこそ天神下の口入宿へ来たのであった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たいらかにあらん日の限
そこで文化二年以来津軽家のようやく栄え行くのにたいらかならず、寧親やすちかの入国の時、みちに要撃しようとして、出羽国秋田領白沢宿しらさわじゅくまで出向いた。しかるに寧親はこれを知って道を変えて帰った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
くぼみたるきざはしをつくりてその顛をたいらかにしたれば、階段をのぼりおりする人も、顔に立ちたる人も下よりあきらかに見ゆべければ、イイダ姫が事もなくみづから案内せむといひしも、深くあやしむに足らず。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)