平日ふだん)” の例文
「今日は平日ふだんのあたしじゃあない。この姿を見て下さい。この袈裟の手前としても、いざこざなしに話をしましょう」
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
また出品する以上は普通の物では平日ふだんの店にさわるので、なかなか苦しい立場である。で、今度の事は、一時の商売的ではなく、ただただ店を保護するためである。
かけ平日ふだん百か二百の端足はしたぜにさへ勘定かんぢやうあはざれば狂氣きやうきの如くに騷ぎ立る五兵衞なれば五十兩の事故鬼神おにがみの如くいきどほり居たる所へ番頭久八進み出て私し儀幼少えうせうの時よりの御恩澤おんたく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
別段悩める容態ようすもなく平日ふだんのごとく振舞えば、お浪はあきれかつ案ずるに、のっそり少しも頓着とんじゃくせず朝食あさめししもうて立ち上り、いきなり衣物を脱ぎ捨てて股引ももひき腹掛け着けにかかるを
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まだ、女は平日ふだんの半分だも仕事をしていなかった。赤い爛れた目のようなランプは、月のなくなると共に再び暗い室を占領した。女は昨夜のように、東に向って、下を向いて仕事にとりかかった。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貞之進は始終耳をそばだてゝ居たが、ついに思う名を聴得なかったので、平日ふだんならば男児が塵芥ちりあくたともせぬほどのことが胆を落し、張合なげに巻煙草を吸附て居ると、その芸妓はこっち向きに居坐いざり直って
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
平日ふだんならば南蛮和尚といへる諢名を呼びて戯談口きゝ合ふべき間なれど、本堂建立中朝夕顔を見しより自然おのづれし馴染みも今は薄くなりたる上、使僧らしう威儀をつくろひて
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
平日ふだんから油んだ髪をきらっていたから、菅糸すがいとだって、葛引くずひきだって
平日ふだんならば南蛮なんばん和尚といえる諢名あだなを呼びて戯談口じょうだんぐちきき合うべき間なれど、本堂建立中朝夕ちょうせき顔を見しよりおのずとれし馴染なじみも今は薄くなりたる上、使僧らしゅう威儀をつくろいて
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
※とした看板がかけてあって、夏の午前あさは洗濯ものの糊つけで、よく売れるので忙しがっていた。平日ふだんでも細い板切れへ竹づッぽのガンクビをつけたのをもって、お店から小僧さんが沢山買いに来た。
病人あしらひにされるまでの事はない、手拭だけを絞つて貰へば顔も一人で洗ふたが好い気持ぢや、とたがの緩みし小盥に自ら水を汲み取りて、別段悩める容態やうすも無く平日ふだんの如く振舞へば
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
モルガンのそういう調子には、何処か平日ふだんとは違うものがあった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
平日ふだんは重い口が、顔が赤銅色に染まると