帯剣たいけん)” の例文
旧字:帶劍
ただ、帯剣たいけんだけはなかったのです。そのうちに、ほんとうの大尉どのが司令部に出て来て、自分でも呆れている始末です。
火薬庫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人ともパンツのまま横になっていたので、上衣うわぎを着ればよいのだ。巡査は用意の為に帯剣たいけんまでつけて、階下に降りた。邸内は死んだ様に静まり返っている。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其巡査の話に、正服せいふく帯剣たいけんで東京を歩いて居ると、あれは田舎のおまわりだと辻待つじまちの車夫がぬかす。如何してかるかときいたら、で知れますと云ったと云って、大笑した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
貴人の風格のある例の小旋風しょうせんぷう柴進さいしんは、衣冠いかん帯剣たいけんの身なりで、九紋龍史進と浪子ろうし燕青えんせいのふたりを供人ともびとに仕立て、大名府の小路こうじの角に、さっきから、かなり長いことたたずんでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紙洗大尉は、かたわらの帽子掛けから、帽子と帯剣たいけんとを取ると、身づくろいをした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こんなことを云っているうちに、噂のぬし帯剣たいけんからめかしながら入って来た。近所の人であるから、忠一ともかね相識あいしっているのである。双方の挨拶はかたの如くに終った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それら屈強の人々が、賊の影を見るや、帯剣たいけんを鳴らして殺到した。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
警官達は、帯剣たいけんを握って走る。もつれる影、乱れる靴音。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)