席捲せっけん)” の例文
道庵の引掻き廻しも怖いが、お角親方なるものは、大阪をはじめ、全関西の興行界を席捲せっけんするのはらを抱いて乗込みかねぬ奴である。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
チムールやジンギスカンというような偉大な征服者は、さながら旋風のように地上を席捲せっけんして、宇宙を併合しようと努力した。
さらに長駆して川中島を突破し、敵の一拠点、海津かいづを抜き、附近を席捲せっけんし、少なくも信玄勢力圏の一端に報復を与えて引揚げても遅くはあるまい。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六百台余の重爆撃機が天地を震撼させて進軍する様は世界を席捲せっけんするが如く感じました。とても英国なんかかなえそうもないような気がしてじりじりしました。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここでふたたび問題になるのが、例の彼の「長い黒の外套がいとう」である。リッパア事件は、鮮血の颱風たいふうのようにイースト・エンドを中心にロンドン全市を席捲せっけんした。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
と云うのが、一種の透視的な驚異を帯びてきて、それから村里から村里の間を伝わり、やがて江戸までも席捲せっけんしてしまったというのが、そもそもの始まりである。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
今や抜刀斬込み隊の勢いである、遠慮は無用、杉戸をがらりと明けて、襖は土足のままこれを蹴放けはなしてずかずかゆく、非常に壮快だ、無人の野を席捲せっけんする概がある
彼は愛親覚羅あいしんかくら氏が絶漠ぜつばくより起り四百余州を席捲せっけんするの大機を洞観し、国防的経綸けいりんを画せり。彼は思えり、北狄ほくてき、支那を呑む、いて我くにに及ぶ、殷鑑いんかん蒙古にありと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そしてこの北方の蛮族がついに中原を席捲せっけんして国礎を定めたのが、即ちこの愛新覚羅あいしんかくら朝である。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
府内を席捲せっけんしつつある袈裟掛けの闇斬やみぎり!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
りょうを亡ぼしたきん(満州族)は、やがて太原たいげん燕京えんけい席捲せっけんして、ついに開封かいほう汴城べんじょうの都にせまり、徽宗きそう皇帝からきさきや太子や皇族までを捕虜として北満の荒野にらっし去った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お秀の家も昔は百瀬家の家臣筋で、天文の時分に北条氏康が関東席捲せっけんの際には上杉方に味方した百瀬の主人と共に大師河原に立籠って戦ったことなどあると言い伝えられていた。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
賤ヶ嶽からこれまで、一席捲せっけんの勢いで進撃しつづけて来た秀吉も、茂山を前にひかえて
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌十九日の朝になると、薩軍の前進は、刻々と報告され、一挙、熊本を席捲せっけんして、北上しようとする颱風のような全軍の相貌と殺気は、もう鎮台兵の肌近くひしひしと迫って来た。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賤ヶ嶽附近を席捲せっけんし、翌朝へかけて、余吾西岸を追撃しつづけるまで——東野山の第一陣地が、目と鼻の先に、敵勝家の本陣を見ながら何らの見るべき活動を起していなかったのは事実である。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、あっけない程、一方的な突進猛撃に席捲せっけんされていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)