たた)” の例文
山の神様のお使いだとか言って、それを殺すとたたりがあるって、皆恐ろしがっています。……あさどりって、小さい紫色をした蝶々ですよ。
北国の人 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
それが打身のようになって、暑さ寒さにたたられては困るというので、支配頭の許可を得て、箱根の温泉で一ヵ月ばかり療養することになったのである。
温泉雑記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが、その酒がたたって、卒中のように倒れたなり、気の遠くなってしまった事が、二度ばかりある。一度は町内の洗湯せんとうで、上り湯を使いながら、セメントの流しの上へ倒れた。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしより歳一つ上のお夏呼んでやってと小春の口から説き勧めた答案が後日のたたり今し方明いて参りましたと着更きがえのままなる華美姿はですがた名は実のひんのお夏が涼しい眼元に俊雄はちくと気を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
斯様なると暴風雨は弱い塀にたたる道理で、魔の手は蒲生へ向うよりは葛西大崎の新領主となった木村伊勢守父子の方へ向って伸ばされ出した。木村父子は武辺も然程さほどでは無く、小勢でもある。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「全く争われないもんだ。口が耳まで裂けていたからな。たたられまぃが」
とっこべとら子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おせいはそれがたたっているのだと始めて始終が見えきったように思った。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さわらぬ神にたたりなしとどんな男からも怖れられた玄竜が、それしきの夢にこれは又何ごとだと思えば急に忌々しくもなって来た。惨めな残骸をさらしている桃の枝が今の自分の姿とも思われるのだ。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
「とかく、建白の一件はたたりますナ。」と得右衛門の声で。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
屠牛とぎゅう所の生き血のたたりがあの湖にはあるのだろう」
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
昂奮こうふんたたったのか、寒い夜気がこたえたのか、帰途につこうとしていた清逸はいきなり激しい咳に襲われだした。喀血かっけつの習慣を得てから咳は彼には大禁物だった。死のおびやかしがすぐ彼には感ぜられた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「カントの論文にたたられたんだね。」
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)