岩燕いわつばめ)” の例文
附近あたりで虫が鳴いている。パチパチパチパチパチパチと、岩燕いわつばめが群をなしてさっと頭上を翔け過ぎた。それさえ所がら物寂しい。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ね、あすこにはやぶうぐいすや岩燕いわつばめやいろいろ居るんだ。鳥がチッチクチッチクなき出したろう。もう僕は早く谷から飛び出したくて飛び出したくて仕方なかったんだよ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
竹童ちくどう口笛くちぶえを鳴らしながら、鹿をおきずてにして、岩燕いわつばめのごとく、渓流けいりゅうをとびこえてゆくと、さるの大群も、口笛について、ワラワラとふかい霧の中へかげを消してしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水をかすめて去来する岩燕いわつばめを眺めていると、あるいは山峡やまかい辛夷こぶしの下に、みつって飛びも出来ないあぶ羽音はおとを聞いていると、何とも云いようのない寂しさが突然彼を襲う事があった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すずめ岩燕いわつばめ山雀やまがら、かわらひわなどが、入り交り、立ち交り、彼を悩ます。彼らはその翼で彼の枝の先をこづく。あたりの空気は、彼らのきれぎれの鳴き声で沸き返る。やがて、彼らは退散する。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
岩燕いわつばめは空に舞っているし、鶺鴒せきれいは岩の上を飛んでいるし、五位鷺は岸のあしの中に、片足でいかめしく立っていて、カラリと晴れた今日の風景は、美しく清らかで幸福そうであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたしが釣竿を垂れていると、一羽の岩燕いわつばめがその上に止まった。
岩燕いわつばめのように、麓まで駈け降りた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、河原の崖の周囲を、無数の岩燕いわつばめが飛びっていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
岩燕いわつばめ