寝泊ねとま)” の例文
旧字:寢泊
客の、御書院番頭脇坂山城守が、せき込んで、何か言おうとしたとき百余の門弟が寝泊ねとまりしている道場の方に当って、急にガヤガヤと人声がいた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
中で寝泊ねとまりから炊事すいじから何から何まで出来るりっぱなものだと吹いておいたものだから、さてこそわれもわれもと、連れて行くことをねだられるのだった。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兄さんは自分の身躯や心が自分を裏切うらぎ曲者くせもののように云います。それが徒爾いたずら半分の出放題でほうだいでない事は、今日きょうまでいっしょに寝泊ねとまりの日数ひかずを重ねた私にはよく理解できます。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仕方なしに昔しの相弟子あいでしの店へ寝泊ねとまりまでさせてもらって仕事をしているのだ。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
階下は全部漆喰しっくいで商売に使うから、寝泊ねとまりするところは二階の四畳半一間あるきり、おまけに頭がつかえるほど天井が低く陰気臭いんきくさかったが、くるわき帰りで人通りも多く、それに角店かどみせ
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
だからこの夏期は夜番といつくろって父娘おやこ二人水泳場へ寝泊ねとまりである。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
叔父は忙しい身体からだだと自称するごとく、毎晩同じ所に寝泊ねとまりはしていませんでした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母は彼女の生れ落ちた当初すでに僕の嫁ときめただけあって、多くあるめいおいの中で、取り分け千代子を可愛かわいがった。千代子も子供の時分から僕の家を生家のごとく心得て遠慮なく寝泊ねとまりに来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)