媒酌ばいしゃく)” の例文
良縁と認めて、僕達夫婦は媒酌ばいしゃくの労を執った。会社で一番綺麗なタイピストだ。若い社員が大部分列席して、披露宴は頗る盛大だった。
四十不惑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
不愍ふびんな者じゃ。亡き右府様になり代って、秀吉が改めて、媒酌ばいしゃくしてとらせる、生れかわった者として、山より迎えるがよい」
新妻のお花は課長村山の遠縁の者で、長らく彼の家に寄寓していたのを、縁あって宗三がもらい受たのだ。媒酌ばいしゃくはいうまでもなく課長さんである。
接吻 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鰻飯は西洋料理の媒酌ばいしゃくとなり、西洋料理は金の時計の手引きとなり、これよりかれに移り、一より十に進み、一進また一進、段々限りあることなし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
島谷との媒酌ばいしゃくを思い立ったのであるけれど、おふみの心の一隅には、さすがに切ないものが残っていた。
蝙蝠 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
工学士蘆鉦次郎氏(三十五)は望月貞子の媒酌ばいしゃくにて窮行女学院今年の卒業生中才色兼備の噂高き高谷千代子(十九)と昨日品川の自宅にて結婚の式を挙げられたり。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
わが留守に浪子は貴族院議員加藤かとうなにがし媒酌ばいしゃくにて、人もあるべきにわが従弟いとこ川島武男と結婚の式すでに済みてあらんとは! 思わぬ不覚をとりし千々岩は、腹立ちまぎれに
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そしてその結果は井上博士が媒酌ばいしゃくとなり、ついに僕は大塚の家を隠居し高橋の養子となりました。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そうして井伏さんにはとうとう現在の家内を媒酌ばいしゃくして頂いた程、親しく願っております。
わが半生を語る (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そんな筈はない。親許の関谷せきやさんや、媒酌ばいしゃくの方もこの駅に見えた位だから」
身代りの花嫁 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかも今度の縁談は先方からっての所望しょもうだと云う事、校長自身が進んで媒酌ばいしゃくの労をる以上、悪評などが立つわれのないと云う事、そのほか日頃私の希望している東京遊学のごときも
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ことに校長の媒酌ばいしゃくといえば文句もいえぬしね。
段梯子の恐怖 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
東金君は重役の媒酌ばいしゃくで大株主の令嬢を貰ったという評判が郷里くにの連中に強い印象を与えたのである。課長が重役になって、中株主が大株主になっている。
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
又結婚に父母の命と媒酌ばいしゃくとにあらざれば叶わずと言う。是れも至極尤なり。民法親族編第七百七十一条に
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
するとまた、ぜひ媒酌ばいしゃくしようという者が出てきて、黄承彦のことばは、ついに実現した。——といっても、勿論、黄承彦が嫁入りするわけはない。孔明へ嫁いだのは、その娘である。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やゝ、晩婚のきらいはあったが、先代夫妻の媒酌ばいしゃくで、同業の番頭仲間の娘を貰うことになった。主人の差し金ゆえ、一も二もなかった。貰った女は若くて案外、浄瑠璃の中の女のような娘であった。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)