女將おかみ)” の例文
新字:女将
大きい聲では言へませんが、お隣の柳屋の女將おかみ——あの通り色つぽい——化けさうな大年増でせう、尤もあんな具合に持ちかけて、元手を
殊に先々代の女將おかみは聲が美しく、天滿てんま村のきりぎりすと呼ばれて、村の老人としよりの中には今でも其の美しい聲色こわいろをつかふものがある。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
『待合の女將おかみでえ!』突然さう言つた者が有つた。私は驚いて目を移した。
我が最近の興味 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
店頭に立ち止まつた配達人の姿を見ると、きりぎりすの孫に當るいなごのやうに痩せた今の若い女將おかみが飛んで出て、配達人に何か言つてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
女將おかみの部屋を出た八五郎は、チヨロチヨロと庭を拔ける、氣のきいた小男に聲を掛けました。二十五六の、いかにもキビキビした男前です。
あの時は、ほんとに喫驚びつくりしたよ。東京の何家どつかの女將おかみにしては野暮臭やぼくさくもあるし、第一言葉が違ふし、それにフイと下駄を見ると、ヒドいやつ
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
襟の掛つた地味な袷、白粉おしろいつ氣無しの、健康さうな白い肌、少し公家眉くげまゆで、受け口で、女將おかみに知れないやう、そつと挨拶を送ると、まことに非凡の媚です。
梅鉢屋の女將おかみ赤毛氈あかまうせんを敷いた店頭みせさきに立つて、「御門内はお腰の物がりまへん。……やすんでおいでやす。……お腰の物を預けておいでやす。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それに佐七は餘計なことを言つた『片瀬の顏馴染の小磯屋』だとか、『女將おかみはお世辭もの』だとか、——氣がとがめるから、あんなに判然はつきりした事を言ふんだ。
「辨天屋の女將おかみも、多勢の女共も、お半と彦次郎の逢引してゐるのを見たこともないといふんですよ」
『えらう遲い御參詣ごさんけいだすな。さアお上りやす。』と、すみの方の暗いところから、五十恰好かつかうふとつた女將おかみらしい女が、ヨチ/\しながら出て來て、かすれた聲で言つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
お前のうちは昔から阿母おつかさんが東京好きで、長火鉢まで東京風のふちせまい奴を態々わざ/\取り寄せて、褞袍どてらなんか着込んで其の前へ新橋邊しんばしへん女將おかみさんみたいにして坐つてゐたが
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
女將おかみの心掛け一つですよ。お葉が派手作りになると、三人の娘も張り合つて客扱ひがよくなる」
亭主の幸七は四十五六、小意氣な華奢きやしやな男ですが、何んとなく正直者らしい愛嬌者で、女房のお角は小料理屋の女將おかみらしく、垢拔あかぬけのした、三十七八の、年にしては少し色つぽい女です。
梯子段の下には女將おかみのお米が、二階の話を氣にして眼を光らせて居ります。
平次は先づ吉原の巴屋ともゑやへ行つて訊きましたが、女將おかみ