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御參詣
『えらう遲い
御參詣だすな。さアお上りやす。』と、
隅の方の暗いところから、五十
恰好の
肥つた
女將らしい女が、ヨチ/\しながら出て來て、
嗄れた聲で言つた。
寺でも
主簿の
御參詣だと
云ふので、おろそかにはしない。
道翹と
云ふ
僧が
出迎へて、
閭を
客間に
案内した。さて
茶菓の
饗應が
濟むと、
閭が
問うた。「
當寺に
豐干と
云ふ
僧がをられましたか。」
『えらい遲い
御參詣だしたな。』と、女は鍋を
焜爐にかけて、
手際よく
煑始めた。