はず)” の例文
はずみ行く馬のあやう鰭爪ひづめに懸けんとしたりしを、馭者は辛うじて手綱を控え、冷汗きたる腹立紛れに、鞭をふるいて叱咤しったせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「滅多に手応えが無いんだそうで、——もっとも返事も貰ってくれたら、一分位ははずんでもいいというのもありますがね」
はずみましたとも。あれからこども達と一緒にクンカンなんかりましてね。ひどはしやぎましたよ。」
余ほどはずんで、殆ど張り切って居ると云う様である、鞍置かせて乗るが否や、鞭も当てぬに一散に駆け出して少しの間に停車場へは着いた、茲で少し許り聞き合わせて見ると直ぐに分ったが
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
値段の処も私にしては一寸ちょっとはずんだつもりだった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「滅多に手答へがないんださうで、——尤も返事を貰つてくれたら、一分くらゐははずんでもいゝといふのもありますがね」
あの腕車より迅く行ってもらおうと思やこそ、こうして莫大ばくだいな酒手もはずもうというのだ。どうだ、先生、恐れ入ったか
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するくせに、妙に慈悲善根がつたことが好きで、町内の義理とか、氏神の祭禮などには、恐ろしくはずみやがるんで
「ときに皆さん、あのとおり御者も骨を折りましたんですから、お互い様にいくらか酒手をはずみまして、もう一骨折ってもらおうじゃございませんか。なにとぞ御賛成を願います」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつもの調子で、機嫌よく愛嬌を振りきながら、三人へ一分づつはずんで行きましたよ。屆く人ですね
前足でつかまえた、放さないから力を入れて引張ひっぱり合ったはずみであった。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前の口をふうじたか知らないが、俺はその倍だけはずまうぢやないか、——實は金之助に良い嫁がきまりかけてゐるんだが、八王子へ行くと言つて飛出しちや、新宿あたりで流連いつゞけをしてゐる樣子だ
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
と両腕をはずんで振って、ずぼん下の脚を上げたり、下げたり。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「西国巡礼に行ったよ。——お前も餞別せんべつを一朱はずんだじゃないか」
「西國巡禮に行つたよ。——お前も餞別せんべつを一朱はずんだぢやないか」
「大層はずみゃがったな」