-
トップ
>
-
奥方様
>
-
おくがたさま
又奥方様をくはせる……
剰へ、
今心着いて、
耳を
澄ませて
聞けば、
我自からも、
此の
頃では
鉦太鼓こそ
鳴らさぬけれども、
土俗に
今も
遣る……
天狗に
攫はれたものを
探す
方法で
「それはとても
及びませぬ
事で、
奥方様。」
何分夜が
更けましたで、
道を
教へますものも
明方まで
待ちませうし、
又……
奥方様も、
何の
道お
草臥れでござりませうで、いづれにも
夜が
明けましたら、
分るに
相違ござりません。
『
奥方様で、はゝ、
何や、
一寸お
見申せ。』と
頤を
向けると、
其処に
居た
女中が