天譴てんけん)” の例文
「武道をたしなむ者が道を誤まるとは何ごとじゃッ。無辜むこの人命あやめし罪は免れまいぞ! 主水之介天譴てんけんを加えてつかわすわッ。これ受けい!」
「暴力妄動もうどうはよろしくない。かえって、山門の威厳を失墜することになろう。よろしく、合法的に、邪教のうえに天譴てんけんをくだすべきであろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この大震を天譴てんけんと思へとは渋沢しぶさは子爵の云ふところなり。誰かみづから省れば脚にきずなきものあらんや。
天譴てんけんだとか、天譴でないとか、いろいろなことを言つてゐるが、それは各自の主観の問題だから、何うにでも感じられるであらう。事実、天譴と感じたものも沢山にあるだらう。
自然 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
脚に疵あるは天譴てんけんかうむ所以ゆゑん、或は天譴を蒙れりと思ひ得る所以ゆゑんなるべし、されど我は妻子さいしを殺し、彼は家すら焼かれざるを見れば、誰か又所謂いはゆる天譴の不公平なるに驚かざらんや。
「当職所司代は名判官と承わる。これなる四人の公盗共がかすめし珠数屋の財宝財物を御糺問ごきゅうもんの上、すみやかにお下げ渡し然るべし。江戸旗本早乙女主水之介、天譴てんけんを加えて明鑒めいかんを待つ」
「いっその事、天譴てんけんがあらわれて、こんな痴児ちじはみな、海嘯つなみさらわれてしまえ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰かみづから省れば脚にきずなきものあらんや。僕の如きは両脚りやうきやくの疵、ほとんど両脚を中断せんとす。されど幸ひにこの大震を天譴てんけんなりと思ふあたはず。いはんや天譴てんけんの不公平なるにも呪詛じゆその声を挙ぐる能はず。
淫風佚楽いんぷういつらく、上下共に、この悪世相へ眼をさまさないと、今に何か天譴てんけんが下るのではないかと。——痛切に、今の人間どもが、憂えられる。お犬様の下におかれ、畜生以下にされているのも仕方がない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平常は冷笑してた天譴てんけんとかいうことも、真剣に思い出されて、初めの元気を喪失そうしつしてしまったばかりでなく、寒々と峠のささむらを渡る夕風の中に、ぶるぶるっと心の底からおじけに似た戦慄をいだいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)