しょ)” の例文
旧字:
冷くドロドロした、しょっぱい寒天みたいなものだったが、実にうまかった。私はあとにも先にも、あんなうまい物をたべたことがない。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と冷やかし笑いをして見せたら、試験官の奴、しょっぱいつらをして睨み付けたと思うと、プリプリして出て行きおった。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
梓はかつて、蝶吉の仇気あどけない口から、汐干しおひに行って、騒ぎ歩いて、水を飲んだ、海水はしょッぱいということを、さもおおいなる学理を発見したごとくにいうのを聞かせられた。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
学校帰りの子供達が、わたし船を待っていた。私がなぐられるのを見ると、子供達はドッと笑った。鼻血がのどへ流れて来た。私は青い海の照り返りを見ながら、しょっぱいなみだすすった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
何もかもがその色に染まってしまいそうな深い群青ぐんじょうの海、そして潮の匂いがすぐにみずみずしい藻を連想させたり、それ自体がしょっぱい味を運んでくる潮風を吸い込んだりするときに
乳と蜜の流れる地 (新字新仮名) / 笠信太郎(著)
彼はただ、口の中がしょっぱくなるのを、かすかに感じただけだった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
くっつけ合った二人の頬のあいだに、涙があふれて、あたしの口にしょっぱい液体が、ドクドク流れこんでくるのよ
断崖 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「それならば待たしやませ、しょツぱいが味噌漬みそづけこうの物がござるわいなう。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのゴノゴッケンの陽性なんで、テッキリ脳梅毒……何をするかわからねえということになってめ込みを喰ったもんです。その又、船のお医者って奴がチャチなしょっぱい野郎だったのでしょう。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しょっぱい味がする……重曹の味だけだ。オカシイナ……オカシイ……。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)