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坂井
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さかゐ
おい
昨夜枕元で
大きな
音がしたのは
矢つ
張夢ぢやなかつたんだ。
泥棒だよ。
泥棒が
坂井さんの
崖の
上から
宅の
庭へ
飛び
下りた
音だ。
其晩宗助の
夢には
本多の
植木鉢も
坂井のブランコもなかつた。
彼は十
時半頃床に
入つて、
萬象に
疲れた
人の
樣に
鼾をかいた。
座敷で
見ればすぐ
崖の
上だが、
表から
廻ると、
通りを
半町許來て、
坂を
上つて、
又半町程逆に
戻らなければ、
坂井の
門前へは
出られなかつた。