けしか)” の例文
それをけしかけられたいぬのように、一方ばかり責めるとは何事だ。俺は牛飼を訴えて、村役人がどういうふうに処分するかを見てやるのだ。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
饑渇に迫られ、犬仲間との交を恋しく思って、時々町に出ると、子供達が石を投げつける。大人も口笛を吹いたり何かして、外の犬をけしかける。
給仕頭のガルボは奥様にけしかけられてこの犬のために大怪我をしたということですが、そういうことは他の犬の場合においては絶対にあり得ません。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「何を獨り言を言つて居るんだ。門口でモヂモヂやつて居ると、乞食坊主と間違へられて、犬をけしかかけられるぞ」
車前草しゃぜんそうなどの繁った日当りのよさそうな平に出ると、斯ういう所には蝮蛇まむしが甲良を干しているものだといいながら、犬をけしかけたり杖で草を叩いたりする。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
要するに夫も私も、互いが互いをけしかけ合い、そそのかし合い、しのぎけずり合い、どうにもならない勢いに駆られて夢中でここまで来てしまったのである。………
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
却ってお角にけしかけられて、主人のアグネスに飛びかかって、とうとう咬み殺してしまったというわけです。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だから、言わねえこっちゃねえ、あいつを、ああけしかけて置きぁ、火の中へも飛び込むよ。あの勢いで押しかけて行った日にゃ、やにっこい役人はタジタジだぜ。何とかするよ。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鳩の首をぢようが、孔雀の雛を殺さうが、犬をけしかけて羊を追ひ𢌞さうが、温室の葡萄のをちぎらうが、一番大事な花のつぼみむしらうが、誰ひとりとして、邪魔するものもなければ
「何を独り言を言っているんだ。門口かどぐちでモジモジやっていると、乞食坊主と間違えられて、犬をけしかけられるぞ」
自分ニハ実力ガナイ代リニ、美女ヲ美男ニけしかケテ、家庭ニ紛紜ふんぬんヲ起サセテ、ソレヲ楽シムコトハ出来ル。………
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けしかけてみろ! 一言犬を嗾けてみろ! 犬もろとも一発の下に貴様を撃ち殺すぞ! ようく見ろ! 今夜の俺の顔を! 命が惜しくなくば犬を嗾けてみろ!」
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼女は次第に神経がたかぶって、物狂おしいほどに取りのぼせていた。ここでうっかりけしかけるようなことを云ったら、病犬やまいぬのような彼女は誰にくらい付こうも知れなかった。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
むしろ、そういう見学は避けた方がよろしい、避けしめるのが、先輩のつとめというものだが、ここでけしかけるようなことを言う関守氏は、その言葉つきからしてわざと下品に砕けて
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悲哀トリステサに噛み付かれたという以上は、もちろん妻が怒りのために悲哀トリステサけしかけたに違いなく、妻がそれほどまでに怒ったということは、やはりガルボが身分をもわきまえず
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
あくる日、池渫いけさらいに行った平次とガラッ八は、あまりの事に仰天しました。瓢々斎ののこした寺島の寮は、店仕舞と煤掃すすはきと壊し屋を一ぺんにけしかけたほどの荒らしようです。
横目に金袋をにらんで、口にはよだれというていは、全く以て授かり物、渡りに舟と言おうか、一方の旦那は、けしかけて資本もとでを貸して洛北岩倉村の賭場へしやろうとするのに、一方の野郎は
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いくら夫にけしかけられてもそういう道にはずれたことができるものかと、反撥はんぱつを感じていたのであったが、「キワドケレバキワドイホドヨイ」と云われるに及んで、私の心に急回転が起った。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何か力あって、この女性を後ろからけしかけるもののように
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「親分、馬吉をけしかけたのは誰でしょう」
と雪子もけしかけるような口調で
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「親分、馬吉をけしかけたのは誰でせう」