咳拂せきばらひ)” の例文
新字:咳払
この騷ぎの最中に、また私の眼も耳も自分の前の光景にすつかりとられてゐるとき、私はすぐ背後うしろに近く咳拂せきばらひの聲をきいた。振り向くとサムがゐた。
ものべたくなつたときには、何時いつ躊躇ちうちよしながら咳拂せきばらひして、さうして下女げぢよに、ちやでもみたいものだとか、めしにしたいものだとかふのがつねである、其故それゆゑ會計係くわいけいがゝりむかつても
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一つには一どうがひつそりとして咳拂せきばらひをもせぬせいであらうがきはめて明瞭めいれうきとられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
覗き𢌞りながら、ポケットからゴールドの時計を出して見て、何か燥々いら/\するので、頻にクン/\鼻を鳴らしたり、指頭で髮の毛を掻𢌞したり、またはのどたんでもひツからむだやうにやたらと低い咳拂せきばらひをしてゐた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)