古家ふるや)” の例文
近所近在の人々が大勢寄ってたかって居る。くだん古家ふるやを買った人が、崩す其まゝ古材木を競売するので、れを買いがてら見がてら寄り集うて居るのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この秋海棠しうかいだう杉垣すぎがきのまだかれないまへから、何年なんねんとなく地下ちかはびこつてゐたもので、古家ふるやこぼたれたいまでも、時節じせつるとむかしとほくものとわかつたとき御米およね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地続きにあるその古家ふるやは、二つに仕切って一方には震災のとき避難して来て、そのままになっている弁護士T氏の家族が住まい、三間ばかりの一方に庸三の上の子供たちが寝起きしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
さうだ、わたしは今夢をみてゐたのだ、故里ふるさとの吾古家ふるやのことを。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
森の古家ふるやの蔦かづら花も真紅しんく
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この秋海棠は杉垣のまだ引き抜かれない前から、何年となく地下にはびこっていたもので、古家ふるやの取りこぼたれた今でも、時節が来ると昔の通り芽を吹くものと解った時、御米は
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)