反齒そつぱ)” の例文
新字:反歯
『お誂へは?』と反齒そつぱの女中に問はれて、「天麩羅」と云はうとしたが、先刻の若い男の顏がチラリと頭に閃いたので
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
旦那はタバコのやにの黒く染み込んだ反齒そつぱの口を大きく開いて、さも恩に着せるやうな調子でこんなことを言つた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ふりむけてのおもてれば出額でびたい獅子鼻しゝばな反齒そつぱの三五らうといふ仇名あだなおもふべし、いろろんなくくろきに感心かんしんなはつき何處どこまでもおどけてれうほうくぼの愛敬あいけうかくしの福笑ふくわらひにるやうなまゆのつきかた
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あの聲は旦那であると思ふ間もなく、反齒そつぱの突き出た唇を尖がらして、小皺の多い旦那の顏は、頭の上からかぶさるやうにして、お光の眞上に現はれた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それは一つは、葡萄えび色の緒の、穿き減した低い日和下駄を穿いてる爲でもある。肉の緊つた青白い細面の、醜い顏ではないが、少し反齒そつぱなのを隱さうとする樣に薄い脣をすぼめてゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、旦那は反齒そつぱの口から唾液つばを飛ばして喋舌しやべつた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)