もろ)” の例文
旧字:
そして、早速、両腕を牡山羊のもろの角にかけた。しかし、忽ち山羊の猛襲に耐え兼ね、たじたじとなり、よろめいて手をはなした。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
しかし、フラフラ歩んで来て座に着くと、彼女は昂奮を鎮めるかのように両眼を閉じ、もろの腕で胸を固く締めつけていて、しばらく凝然じいっと動かなかった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と持って居た薬鑵を投げると、もろに頭から肩へ沸湯をあびせたからお累は泣倒れる。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と阿念はもろに開いた足を、ジリジリと詰めて身を伸ばして来た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
罪のなき憶ひに至りもろを眠れぬ夜更けの灯にかざしたり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
もろかひなをとりかはし昨日か戀ひし。今日ははた
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
と駈出してにげる途端母親おふくろが止め様としたはずみ、田舎では大きな囲炉裏が切ってあります、上からは自在が掛って薬鑵やかんの湯がたぎって居た処へもろかえりまして、片面これからこれへ熱湯を浴びました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)