はげ)” の例文
と、声色共にはげしく、迅雷じんらいまさに来らんとして風雲大いに動くの概があった。これを聴いたパピニアーヌスは儼然げんぜんとしてかたちを正した。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
ついに「大雅思斉たいがしせい」の章の「刑干寡妻かさいをただし至干兄弟けいていにいたり以御干家邦もってかほうをぎょす」を引いて、宗右衛門が雝々ようようの和を破るのを責め、声色せいしょく共にはげしかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
衆徒は驚いて、こは何事と増賀をひき退さがらせようとしたが、増賀は声をはげしくして、僧正の御車の前駈さきがけ、我をさしおいて誰が勤むべき、と怒鳴った。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かれは声をはげしゅうして家内へ跳り込むと、父は忽ち大きい古狸に変じて床下へ逃げ隠れたので、兄弟はおどろきながらも追いつめて、遂に生け捕ってち殺した。
又宮中に於いて尊意が加持祈祷かじきとうしている時、帝は夢に不動明王ふどうみょうおうが火焔の中で声をはげまして呪文じゅもんを唱えていると見給い、おん眼がさめて御覧になると、それは尊意の読経どきょうの声であったと云う。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孝孺いよ/\奮って曰く、すなわち十族なるも我を奈何いかにせんやと、声はなははげし。帝もと雄傑剛猛なり、ここに於ておおいいかって、刀を以て孝孺の口をえぐらしめて、また之を獄にす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
太守も不思議に思って、ひそかに李の方をみかえると、彼も色蒼ざめて、杯をることも出来ないほどにふるえているのである。やがて士真は声をはげしゅうして、自分の家来に指図した。