半頃なかごろ)” の例文
それを取上げてペラペラとページをめくってみると、半頃なかごろページを折ってあるところがあった。そこを開けると、白い小布こぬのしおりのようにはさまっていて、矢印が書いてある。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その五里の路の半頃なかごろに、何とか言ふ一つの小さな村があつた。何でも笠といふ字の着く村であつた。そこに祖母の墓がある。それを兄と一緒にお詣したのも其の時だつた。
百日紅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
元禄の半頃なかごろから、西国方面の密貿易ぬけがい仲間は、急激に、数と力を加え、莫大な利をしめて、巨財をもつと共に、外国製の武器、火薬なども、ひそかに、諸所の島へたくわえ出した。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殿様は能くも御覧にならず、何かしきりに御思案の様子でございましたが、踊の半頃なかごろ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
驚いたって、はじめは串戯じょうだんだと思ったし、半頃なかごろじゃ、わざと意地悪くするんだと思ってしゃくにも障りましたがね、段々真面目まじめなのに気が付いたんです。確に嬰児あかんぼでも沈めたと思ったらしい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまびらかに申立よと有りしかば長庵然らば言上ごんじやう仕つり候じつは私し事忠兵衞のつまとみと久しく密通みつつう致し居候處煩腦ぼんなういぬおへども去らずつひに先月の半頃なかごろ忠兵衞に見顯みあらはされ面目も無き次第故私しも覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
尊氏が病間になずみ出したことも、初めは、ごく側近にしか知られていなかったが、月の半頃なかごろにはやがて外部にも洩れて、それは洛内じゅうの大きな関心事とならずにいなかった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……もう二た月ほど前。あれやあ六月の半頃なかごろですがね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)