利足りそく)” の例文
筋骨すじぼね暴馬あれうまから利足りそくを取ッているあんばい、どうしても時世に恰好かッこうの人物、自然淘汰とうたの網の目をば第一に脱けて生き残る逸物いちもつと見えた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
なぐるなんと云う余計な手数てすうは掛けない。そんな無駄をする程なら、己は利足りそくの勘定でもする。女房をもその扱いにしていたのだ。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
くやしいにつけゆかしさ忍ばれ、方様かたさま早う帰って下されと独言ひとりごと口をるれば、利足りそくも払わず帰れとはよく云えた事と吠付ほえつかれ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ペピイは生涯大酒たいしゆを飲み通したので、その飲んだ丈の酒の利足りそくを痰唾にして、毎日大地に払ひ戻すのかと思はれる。
老人 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
いれ利足りそく何程なにほどにても出し申さんと云へば彦兵衞も氣の毒に思ひ我等も問屋の方ふさが不都合ふつがふなれども此譯このわけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小学校の費用は、はじめ、これを建つるとき、そのなかばを官よりたすけ、半は市中の富豪より出だして、家を建て書籍しょじゃくを買い、残金は人に貸して利足りそくを取り、永く学校のとなす。
京都学校の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼が生きてゐる間は、小さいながら財産の全部を保菅してゐる Notarノタアル の手で、利足りそくの大部分が西洋の某書肆しよしへ送られるのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)