刀槍とうそう)” の例文
或る宗徒の一団七、八百人の隊は、残暑のがかんかんりつける炎天へ、半裸体のまま刀槍とうそうを手にふるって、城中から突き出し
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
苦悶の跡も、刀槍とうそうの傷も、毒物の斑点もないのですから、卒中かしんの病の頓死といっても、誰も疑う者はなかったでしょう。
闇討ちや刀槍とうそう威迫いはくにはいっこう驚かぬ剛愎な連中も、さすがにどうも膚寒はださむい気持で、その話にだけはなんとなく触れたくなく、しめしあわしたように口をつぐんでいた。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ゆるらかに幾尺の水晶の念珠ねんじゅを引くときは、ムルデの河もしばし流をとどむべく、たちまち迫りて刀槍とうそうひとしく鳴るときは、むかし行旅こうりょおびやかししこの城の遠祖とおつおや百年ももとせの夢を破られやせむ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
後に大膳太夫盛忠だいぜんだゆうもりただというものについて槍術を覚え、それより自ら一流を開いたものでござるが、もとより武芸は出家の心でない、覚禅房は刀槍とうそうを好んで、かくは一流を開きましたなれど
四壁はすべて声なき刀槍とうそうに感じられた。秀吉の眼は、光る穴みたいに見すえている。いやともいえ、おうともいえ、とうながしているまなざしだ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆるらかに幾尺の水晶の念珠ねんじゅを引くときは、ムルデの河もしばし流れをとどむべく、たちまち迫りて刀槍とうそうひとしく鳴るときは、むかし行旅をおびやかししこの城の遠祖とおつおや百年ももとせの夢を破られやせん。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
忽ち、彼の前後に、刀槍とうそうひらめいた。当然、どこかで出会うであろうと、予測していた敵兵である。光秀は、駒を止め
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
峨々ががたる山容は、登るほどけわしくなり、雨の日に洗い流された道は、河底をなしている。万樹はあだかも刀槍とうそうを植えたようで、虎豹こひょううそぶきを思わせる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両陣数千の兵も馬もまた刀槍とうそうの光も——まるで飛沫しぶき翻弄ほんろうされる千鳥ちどりの大群か何ぞのように見えもした。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやいや、刀槍とうそうっ取って、出て来た者は片づけやすかったが、悲鳴をあげて逃げまわる召使の女たちや老婆にはこうじ果てた。そのほうがよほど始末に弱った」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)