冷然れいぜん)” の例文
まま母ははじめから口もださず手もださず、きわめて冷然れいぜんたるものであった。老人は老妻ろうさい冷淡れいたんなるそぶりにつき、二ことことなじるような小言こごとをいうたにたい
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかるに、上役うわやくは、冷然れいぜんとして、皮肉ひにくつきで、そのおとこ見下みくだして、命令めいれいします。この場合ばあい、だれがいても無理むりおもわれるようなことでも、おとこは、服従ふくじゅうしなければなりませんでした。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういったときの博士のおどろきはどんなであろうかと、僕はそれをしゃべるよりも前から興奮の絶頂ぜっちょうにあったのだが、博士は僕の期待に反して冷然れいぜんとしていた。そしていつもの調子の声でいった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかも、あゝ、ゆふべとなれば冷然れいぜんたる泉のなか
濱島はまじま冷然れいぜんわらひ、春枝夫人はるえふじん默然もくねんとした。
花前はときどきあたまを動かすだけで一ごんもものをいわない。技師先生心中しんちゅう非常に激高げっこう、なお二言三言、いっそう権柄けんぺい命令めいれいしたけれど、花前のことだから冷然れいぜんとして相手あいてにならない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)