円錐形えんすいけい)” の例文
旧字:圓錐形
どんなにして持って見ても、外套のすそから下へ、羽が二三寸出る。その上外套の裾が不恰好に拡がって、岡田の姿は円錐形えんすいけいに見える。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
しばらくののち、そこには絹を張ったような円錐形えんすいけいふくろが一つ、まばゆいほどもう白々しろじろと、真夏の日の光を照り返していた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
船から望んだときの三宅島はその火山島らしい円錐形えんすいけいの半ばの高さから下方は淡緑色におおわれて、陸へ上るとすぐ、そこは黒砂のあまり大きくない浜で
石ころ路 (新字新仮名) / 田畑修一郎(著)
円錐形えんすいけいにそびえて高く群峰を抜く九重嶺の裾野すそのの高原数里の枯れ草が一面に夕陽せきようを帯び、空気が水のように澄んでいるので人馬の行くのも見えそうである。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
すべて稲のたばを、穂を内側にして円錐形えんすいけいに積む以外に、最後の一束のみはかさのように、穂先を外に向けておおい掛ける者が今も多く、さらにその上になお一つ
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
隙間風すきまかぜがきらいで、どこででもさむそうに帽子ぼうしをかぶっていたが、その帽子をぬぐと、円錐形えんすいけいの赤い小さな禿頭はげあたまがあらわれた。クリストフとおとうとたちはそれを面白おもしろがった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
この前方の三角形は、実は円錐形えんすいけい廻転錐かいてんきりを横から見たところでありまして、これが廻転するのであります。自分の最も苦心しましたところは、この回転錐であります
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
円錐形えんすいけいのひびが入っているが、そのひびれに、無数の線条が現われ、実にきれいなものである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この鳥籠というのは動物園などにあるような土地へ据えるもので、直径が五尺ばかり高さが一丈ばかり、それは金網にかこまれて亜鉛の屋根のついた、円錐形えんすいけいのものである。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
ただし豆ではなくてとうもろこしを細長い円錐形えんすいけいの紙袋につめたのを売っています。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もぐらの鼻の代りに、円錐形えんすいけい廻転錐かいてんきりをつかうのがいいと、はじめから思っていた。しかしそれをどうして廻すか。それを廻して、はたして土はけずれるか。けずれても前進するかどうか。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
以上のものとは少し違った部類のものであるが、氷柱や鐘乳石しょうにゅうせきが簡単な円錐形えんすいけいまたは紡錘形となる代わりに、どうかすると、表面に週期的のしわを生じ、その縦断面の輪郭が波形となることがある。
自然界の縞模様 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
七味唐辛子しちみとうがらしを売り歩く男で、頭には高くとがった円錐形えんすいけいの帽子をかぶり、身にはまっかな唐人服をまとい、そうしてほとんど等身大の唐辛子の形をした張り抜きをひもで肩につるして小わきにかかえ
物売りの声 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
円錐形えんすいけいや円柱形をしたものもある。
凍雨と雨氷 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)