)” の例文
それは、かれているというより、られている形だった。青は、二歩歩いては立ちまり、三歩歩いては立ち停まるのだった。
狂馬 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
こういう毎夜のわたくしの歩みはいつも、松並木のなかばまで参りました時に、きっと一応立ちまって見るのがつねでございました。
玉章 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ある八百屋やおやの店で、干からびたような水菓子を買っている加世子と女中の姿が、ふと目につき、均平は思わず立ちまった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わずか一町くらいしかないように見えていた花の林は長かった。武士は不思議に思いながら七八町ばかりも往ったが林を出はずれないので立ちまった。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長庵は、胸に問い、胸に答えて、ウム! とひとりうなずいた。琴二郎に園絵——それに相違はねえのだ——。立ちまって、駕籠かごの出るのを待った。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
三人の少年大使は、やがて進めるだけ進んで、火星人の群の前に立ちまった。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
銀子は家の前へ来ると、ちょっと立ちまってしばらく内の様子をうかがっていた。留守に子供たちが騒ぎ、喧嘩けんかもするので、わざとそうしてみるのであった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、向うから来かかった人間が、先に立ちまったから、浅香あさか慶之助の一行も、何気なにげなく足をとめて見守ると
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そう言って自動車の方へ引き返して行くと、その時車から出て来た幼い人たちと、トランクをげた女中とが、そこに立ちまっている葉子のそばへ寄って来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ちょっと立ちまって、新御番詰所に控えている番士一同をかすみのように見渡しているから、何か言うかなと思うと、そのまま何にもいわずに、大きな咳払いを一つ残してってしまった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
庸三は子供に吩咐いいつけたが、送って応接室まで出て行くと、小夜子はふと立ちまって、誰という意識もなしに、発作的に庸三の口へ口を寄せて来た。やがて玄関へおりて行った。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)