偏見へんけん)” の例文
彼は年も若いし、快活で、物を恐れぬ性質で、わたしの知っている中では最も迷信的の偏見へんけんなどを持っていない人間であった。
世には奇特な人もある、弱肉強食のちまたとばかり世間を見るのは偏見へんけんであって、こういう隣人があればこそ、修羅火宅しゅらかたくのなかにも楽土がある。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰でもよく知つてゐるやうに、偏見へんけんを、教育で耕やされ培はれたことの無い心から追ひ出して了ふことは實際難かしいことだ。
甲が乙を評するにいろいろのしき点を述ぶるのを聞くとき、その批評のあやまてることを一々指摘し説明しても甲の偏見へんけんはなかなかになおるものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかもそういうかたがたこそ、自然か人工かという問題で偏見へんけんをお持ちになるのは、あまり似合わないことなのですから、なおさらそれはほめるわけにはまいりませんよ。
したがつてまた、『地方的ちはうてきまた國家的こくかてき偏見へんけん』からは離脱りだつしてゐるつもりだけれども、日本人にほんじんと、日本語にほんごと、日本にほん風俗ふうぞく自然しぜんとにたいして、まだなりおほくの『愛着あいちやく』をつていることあらそはれない。
と私は片時へんじも早く偏見へんけんを一掃することに努めた。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私にはたゞいとはしい惡魔があるだけだといふことをもうあなたは知つてゐる。あなたをだまさうとしたのは惡かつたけれど、あなたの性質にある頑固さを恐れたのです。私は先入の偏見へんけんを恐れたのです。
地方的ちはうてきまた國家的こくかてき思想しさう偏見へんけんまた愛着あいちやくから離脱りだつしたる。