ねい)” の例文
また甚だしきは当路にびたり、浅薄なる外来宣教師にねいしたり、予を悪口嘲弄ちょうろうする奴もある。
かく申上げ候わば、幕府へ媚付こびつき候見識と一概に罵詈ばりする人これ有るべく候えども、愚論果して朝廷のために申上げ候か、幕府へねいし候か、行末ゆくすえの所、御明鑑仰ぎ奉り候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
しかし当代の文士を挙げて滝田君の世話になったと言うならば、それは故人にねいするとも、故人に信なる言葉ではあるまい。成程僕等年少の徒は度たび滝田君に厄介をかけた。
滝田哲太郎氏 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世間からは故人にねいしもしくは故人をかついだものかのように受取られたことが多いのです。
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
曹丕はそのねいを観破することができないで、とうとう甄氏皇后を廃してしまったのである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし当時の王と称する者、皆いわゆる仁義をかりはかる者なり。これをもってその法王にねいする、彼がごとくついに世を救うゆえんのものをもって、民を土炭とたんおとしいるるに至る。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
或ひと曰く、ようや仁にしてねいならずと。子曰く、いずくんぞ佞を用いん。人にあたるに口給を以てし、しばしば人に憎まる。其の仁なるを知らず、焉くんぞ佞を用いん。——公冶長篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
関東の学者、道春以来、新井、むろ徂徠そらい春台しゅんだいらみな幕府にねいしつれども、その内に一、二箇所の取るべき所はあり。伊藤仁斎いとうじんさいなどは尊王の功もなけれども、人に益ある学問にて害なし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)