体格からだ)” の例文
旧字:體格
高い階段はしごだんを上ってゆくと、柳沢はあのさい体格からだに新調の荒い銘仙めいせんの茶と黒との伝法でんぼう厚褞袍あつどてらを着て、机の前にどっしりと趺座あぐらをかいている。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
彼女はそっと階子段をのぼった。柔婉しなやか体格からだをもった彼女の足音は猫のように静かであった。そうして猫と同じような成効せいこうをもってむくいられた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「私は駄目でごす……」と涙の込み上げて来るのを押へて、「私ア、とても貴郎あんたの真似は出来ねえでごす。一体、もうこんな体格からだでごいすだで」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「そねエな殺生せっしょうしたあて、あにが商売になるもんかよ。その体格からだ日傭ひよう取りでもして見ろよ、五十両は大丈夫だあよ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ウム己達おらっち彌平やへいどんの処へ来るたってふかしい親類でもねえが、場所中ばしょちゅう関取が出るから来ているのだが、本当にい関取だなア、体格からだが出来て愛敬相撲だ一寸ちょっと手取てとり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
髭髯ひげが雪のように白いところからそのあだ名を得たとはいうものの小さなきたならしい老人で、そのころ七十いくつとかでもすこぶる強壮なこつこつした体格からだであった。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その若い男は三十ぐらいの苦味ばしった細面の好男子で、きりりと引緊ひきしまった体格からだに、粋な服装みなりをしていて、眼付はごく柔和で、殊に細君を見るときの眼ざしが優しかった。
「決して忘れない、この御厚恩は! けれど私ア、駄目でごす。体格からださへかうでなければ、今までこんなにして村にまご/\して居るんぢや御座ごアせんが……。私は駄目でごす……」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「そうしろよ、そうしろよ。そのでけえ体格からだで殺生は惜しいこんだ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「どうも、いい体格からだだ。全く野生やせいのままだね」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「でけえ体格からだだのう。うさぎのひとつもとれたんべいか?」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)