人柱ひとばしら)” の例文
「人間が生きて行くためには、どうしても人間の生命を失わねば生きて行けないのか、人柱ひとばしら! おれたちは皆人柱なんだ!」
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
安倍能成あべよししげ君が「京城けいじょうより」の中で「人柱ひとばしら」ということが西洋にもあったかどうかという疑問を出したことがあった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その兵庫港の築港をつくる時も、人柱ひとばしらを沈めなければ、海底の礎石がすわらないという工人たちの愚を笑って、石に経文を書かせて沈め、きょうしまを築きあげて
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人柱ひとばしらと成って、きながら壁に塗られ、つつみを築くのにうずめられ、五穀のみのりのための犠牲いけにえとして、まないたに載せられた、わたしたち、いろいろなお友だちは、高い山、おおきな池
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人柱ひとばしらを入れた堤防が一夜に崩れる。右を見、左を見ても、賽の河原は小石の山を鬼に崩されて泣いて居る子供ばかりだ。泣いて居るばかりならまだ可い。試験に落第して、鉄道往生をする。
地蔵尊 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
昔の橋普請はしぶしんなどの伝説を真似て、(小説のことですから人を殺すのは自由自在です)必要もないのにそのコンクリートの中へ、一人の女を人柱ひとばしらとして生埋めにすることが書いてありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人柱ひとばしらということがあります。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人柱ひとばしら
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
有効につかってみせる。およそ大望のおん大事には、あまたなにえが——人柱ひとばしらというものが——るものだ。すでに殿のご正室やお子たちすらも、鎌倉表に幕府のとされておる
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人柱ひとばしららず、魂柱たまばしらこそるなれ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)