人倫じんりん)” の例文
戸籍などはどうでもいいようなものだが、しかし人倫じんりんの道は正しいに越した事はない。幾年も夫婦同様にしていれば結局籍を
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし気違いでもない事がわかると、今度は大蛇だいじゃとか一角獣いっかくじゅうとか、とにかく人倫じんりんには縁のない動物のような気がし出した。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その才物さいぶつなるは一目いちもく瞭然りょうぜんたることにて、実に目より鼻へ抜ける人とはかかる人をやいうならん、惜しいかな、人道以外に堕落だらくして、同じく人倫じんりん破壊者の一人いちにんなりしよし聞きし時は
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
君臣父子兄弟のあの内紛、骨肉同士が殺戮さつりくし合って来たあの暴状。人倫じんりんの腐敗も、あれほどなのは、他国では見られない図でしょう。あなたには、お子はないのか。御一族もないのか
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
森 しかし、人倫じんりんの大道に反く以上、殿といえども、そのままには——。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いつか自然は人間のうちから正しいものを目覚めざますにちがいない。日本がいつか正当な人倫じんりんに立つ日本となる事を信じたい。これはいずれの処を問わず、凡ての国家が懐抱する理想でなければならぬ。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あれは平中の心の中には、何時いつ巫山ふざん神女しんによのやうな、人倫じんりんを絶した美人の姿が、髣髴はうふつと浮んでゐるからだよ。平中は何時も世間の女に、さう云ふ美しさを見ようとしてゐる。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「礼を知るをもって人倫じんりんの始まりという。礼儀をわきまえん奴は、虫けらも同然だ」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつか自然は人間のうちから正しいものを目覚めざますにちがいない。日本がいつか正当な人倫じんりんに立つ日本となる事を信じたい。これはいずれの処を問わず、凡ての国家が懐抱する理想でなければならぬ。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「なろうとなるまいと、なんじらの知ったことか。こりゃ伊那丸、えんからいえば汝の父勝頼かつより従弟いとこ、年からいっても長上めうえにあたるこの梅雪に、やいばを向ける気か、それこそ人倫じんりんの大罪じゃぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をいう、人倫じんりんの道をはずして、人間のどこに誇るものがある」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人倫じんりんの賊。天も憎み給うであろう。ああ、浅ましい」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、人倫じんりんの敵に対する、人間のいきどおりだった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)