云難いひがた)” の例文
入りつ出でつゆらめく男女の影は放蕩の花園にたはむれ舞ふ蝶に似て、折々流れきたる其等の人の笑ふ声語る声は、云難いひがた甘味かんみを含む誘惑の音楽に候はずや。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つとむる者の心得は萬事かくの如し此事我々のうへにある時は自然しぜん面倒めんだうなりとて他人ひとの物にても錠前ぢやうまへたゝあけよなど云事なしとも云難いひがたかりにも錠前ぢやうまへを破るは關所せきしよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いひにける物語二枝ふたつわか不題こゝにまた忠兵衞は主命なれば詮方なくいと云難いひがたき事の由を親子の者に云傳へ其所そこをばにげも出せしが追掛おひかけらる事もやとこゝろの恐れに眞暗まつくら散方さんばう跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
扨又長兵衞は八五郎が掛合かけあひを聞き番頭さんには一おう御道理ごもつともの樣なれ共決しておや亭主ていしゆ見捨みすてたと云譯いひわけにてはなくよめの方にもよく/\居耐納ゐたたまれぬわけある故也八五郎の娘ばかり惡きとも云難いひがたく夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)