二棟ふたむね)” の例文
六畳と三畳二間の二軒長屋が二棟ふたむねならんで立っていた。Nはたった一度書いたことのある「中央公論」を用意していてそれを見せ、信用させた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
別荘と畑一つ隔たりて牛乳屋ちちやあり、かしの木に取り囲まれし二棟ふたむねは右なるに牛七匹住み、左なるに人五人住みつ、夫婦に小供こども二人ふたり一人ひとり雇男おとこ配達人はいたつなり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
我々の別荘は、円柱の並んだ木造の地主屋敷じぬしやしきと、さらに二棟ふたむねの平べったい傍屋はなれから成っていた。左手の傍屋は、安ものの壁紙かべがみを作るっぽけな工場になっている。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
これも文和ぶんなの昔、後芬陀利花ごふだらく院さま(一条経通つねみち)御在世のみぎり、折からの西風にあおられてお屋敷の寝殿しんでん二棟ふたむねが炎上の折にも、幸いこの御秘蔵の文庫のみはつつがなく残りました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
もう秋に入って日も短かくなったこととて、すでにうっすらと夕闇ゆうやみは迫り、うす暗い電気がそこの廊下にはともっていた。建物は細長い二棟ふたむねで廊下をもって互いに通ずるようになっている。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
馬籠の本陣は二棟ふたむねに分かれて、母屋もや新屋しんやより成り立つ。新屋は表門の並びに続いて、すぐ街道とむかい合った位置にある。別に入り口のついた会所(宿役人詰め所)と問屋場の建物がそこにある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これも文和ぶんなの昔、後芬陀利花ごふだらく院さま(一条経通つねみち)御在世のみぎり、折からの西風にあおられてお屋敷の寝殿しんでん二棟ふたむねが炎上の折にも、幸ひこの御秘蔵の文庫のみはつつがなく残りました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)