下手人げしゆにん)” の例文
公方樣お聲掛りの家柄だ。この下手人げしゆにんを擧げなきや、土地の御用聞の顏が立たねえ。錢形の親分の引込思案はかねて承知の上だが、其處を
まちではもういたところ死骸しがいのことゝ、下手人げしゆにん噂計うはさばかり、イワン、デミトリチは自分じぶんころしたとおもはれはぬかと、またしてもではなく、とほりあるきながらもさうおもはれまいと微笑びせうしながらつたり
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「喜三郎、見つともないぞ、觀念して皆んな話せ。お咲を殺したのは誰だ、お前は、知つて居る筈だ、——言はなきやお前が下手人げしゆにんだ」
「お谷婆さんが何んと言はうと、お皆を殺した人間は他にあるんだ。——お谷婆さんを下手人げしゆにんにしちや第一お前の叔母さんに濟むめエ」
緊張しきつた顏と顏、——多分平次の口から、二人まで人を殺した恐ろしい下手人げしゆにんの名を聞けるのかも知れないと思つて居る樣子です。
「一言もあるめえ。この下手人げしゆにんは、三輪の兄哥が睨んだ板倉屋でもなきや、名乘つて出たお前でもないのさ。まア/\俺に任せて置きな」
「例へばだよ八、——そいつは自害でなくて殺しで、死んでから、下手人げしゆにんが死體に匕首あひくちを握らせたとお前は言ふつもりだらう」
「餅の木坂の本多右馬之丞殺しがまだ下手人げしゆにんがわからないのだ——平田源五郎はまさか、そつと此處を拔け出すやうな事はなかつたらうな」
「よい/\本當の下手人げしゆにんさへ擧げれば、三輪の親分もお前には用事はあるまい。お前が言ひ惡いなら聽かない事にしよう」
第一番に下手人げしゆにんと睨まれて、直ぐにも縛られさうになつてゐるのを、萬七と子分とのひそひそ話で知つた婆やのお谷は
「あの通り八五郎がぼんやり戻つて參りました。道場へ知らせてやつても、誰も何んとも言はないやうぢや、他に下手人げしゆにんがあるわけはありません」
「左樣、若旦那の喜三郎はあまり評判が良くなかつたやうだな。が、殺すといふのは容易のことではない、——拙者には下手人げしゆにんの見當も付かぬて」
「あの男は下手人げしゆにんぢやあるめえ。亥刻よつ半から子刻こゝのつまで俺の家の格子の外で話をして居たと申松さるまつ親分に教へて來るが宜い」
その歸途、——下手人げしゆにんの丸吉は伊太松の手柄にさせて、平次と八五郎はこんな話をしながら明神下の家へ急ぐのでした。
「八、一と足先に行つて見てくれ。怨まれる筋があるさうだから、思ひの外手輕に下手人げしゆにんの當りが付くかも知れない」
「首を締めたんぢや無い、虚無僧になつて飛鳥山で返り討にしたんだ。留守番の番頭と女房のお夏は下手人げしゆにんぢや無い」
「お常坊、いゝかえ、綱吉殺しの下手人げしゆにんは俺が請合つて縛つて見せる。その上で話を付けるから、待つて居るんだよ」
石で叩き殺した下手人げしゆにんの見當もつかぬうちに、お月樣は一と晩毎に痩せて、江戸の街もやがて惡魔の跳梁てうりやうに都合の良い、闇夜續きになつて行きます。
下手人げしゆにんですよ。——親分に言ひ付けられた通り、そつと弟の金次郎の野郎を見張つてゐると、案の定あの晩盜んだ金を持出さうとするぢやありませんか。
「どうだ、それに違ひあるまい。——ところでお前は、姉を殺した下手人げしゆにんはよく分つてゐる筈だ。誰だ、それは」
「そいつは大變だ、——春松は俺が二階から降りたのを見たんだらう、——あいつが下手人げしゆにんだ、——娘が危ない」
「で、下手人げしゆにんはどうせ其邊にマゴマゴしちや居まいが、それでも彌次馬の中にうさんな奴でも居なかつたのか」
徳藏稻荷の堂守だうもり殺しは、それつきり下手人げしゆにんが判りませんでした。錢形平次は身一つに引受けて、いろ/\探索たんさくの手をつひやしましたが、何としても解りません。
あの女の家の中に、夕立でヅブ濡れになつた着物があれば、先づ間違ひもなく、お園殺しの下手人げしゆにんだ。ツイ夕立の來る前まで、お園と掴み合ひをした女だ。
締めたのは、お谷がお才殺しの下手人げしゆにんを知つてゐて、それを八五郎に教へようとして居るのを知り、そのお谷の口をふさぐためだつた——それに違ひあるまい
「宜いとも。——五兵衞の死骸は、下手人げしゆにんが解るまで此處から運び出しちやならねえ、解つたかい、皆の衆」
「まだそんなところをせせつてゐるのかい。三年あさつてもあの殺しは下手人げしゆにんが出て來ないよ。馬鹿だなア」
「待つて下さい、眞砂町の親分、——お玉さん始め三人を殺した下手人げしゆにんは、おいらだよ、——この孝吉だよ」
「違ひます。親分さん。小三郎さんは、決して、父さんを殺しはしません、——下手人げしゆにんは外にあるんです」
弱音を吐くやうだが、小牧こまきの旦那が死んぢや、いづれ公儀の御耳に入るだらうし、三日經たないうちに下手人げしゆにんを擧げるやうにと、宿役人からも折入つての頼みだ。
岡つ引の建前たてまへとして、トコトンまで調べ拔いて、下手人げしゆにんの顏を見てやりたい心持で一パイだつたのです。
「それだけの事なら、お前の姉さんを下手人げしゆにんにするわけにはゆくまい。外に何んか手掛りがあるだらう」
だから、今すぐでも下手人げしゆにんを縛つて下さい。土藏へ押入つて、千兩箱を一つ持出した奴と、娘を殺した奴は、同じ野郎に違ひない。千兩箱は惜しくもないが、娘を
女出入りか喧嘩のこじれか、下手人げしゆにんがわからぬまゝに、それつきりになつたが、續いて二人目、加納屋の二番目息子吉三郎が、家の中同樣の物置の前でやられた。
靈岸島れいがんじまの瀧五郎といふ土地の御用聞が、子分と一緒に朝つから詰め切つて、御檢屍前に下手人げしゆにんの目星でもつけようと、一生懸命の活躍を續けてゐる眞つ最中でした。
「よし/\、二人で相談してやつたんでなきや、二人共下手人げしゆにんぢやあるめえ。——少し落着いて話せ」
「そりや當り前だ、お前と逢引した男だけは、間違ひもなくお孃さん殺しの下手人げしゆにんではなかつた筈だ」
「でも、下手人げしゆにんを擧げなきやなりませんよ。敵を討たなきや、御妹樣も浮ばれないといふものでせう」
「錢形の親分。百梃の鐵砲を見付けたのは上出來だつたが、釜屋半兵衞殺しの下手人げしゆにんはどうなるんだ」
お前は宗次郎を下手人げしゆにんと思ひ込んで、そんな事を言ふのだらう。が、宗次郎が下手人でないことは脇差を置いて來たのでも、鞘を隱さなかつたことでも解つて居る。
手代の宗次郎を殺した下手人げしゆにんに相違なく、それに身許も名前もわからず、探しやうもないではないか、そんな者に逢はせろといふのは、世間樣への聽えも恥かしい
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
下手人げしゆにんはお孃さんのよく知つてゐる人間で、相手の顏を見ても起き出さうともしなかつたといふことだ
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
よく聽いてもらひ度い——あつしには花嫁殺しの下手人げしゆにんはわかつたつもりだが、萬一間違ひがあるといけねえ。違つた所があるなら、違つて居ると言つて貰ひ度い——
「何? 錢形の親分が來てくれた? それは有難い。お蔭で明るいうちに下手人げしゆにんが擧がるだらう」
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
檢屍もとゞこほりなくすみましたが、下手人げしゆにんは何んとしても擧がりません。その時家の中に居たのは、殺された市太郎の外には、女主人の浪乃と、小さい娘の早苗さなえと二人きり。
「腕づくでは、彌惣をどうすることもできなかつた下手人げしゆにんは、後ろからチヨイとこの紐を引いた」
父さんはあんな事を言ふけれど、私は勇次郎さんは大嫌ひ、歩くと唐臼からうすむやうなんですもの。——でも殺されて了つちや可哀想ねえ。早く下手人げしゆにんを擧げて下さいよ。
「それだけ解つて居るなら、どうしてむじつの世之次郎を縛つて、眞實ほんたう下手人げしゆにんを逃して置いたのだ」
「私はまア、何うしませう。こんな事になつて、主人だつてあんなむごたらしい死にやうをしては浮ばれません。どうぞ、お願ひだから下手人げしゆにんを擧げて、敵を討つて下さい」
若旦那の眞太郎さんが入つて來るのを、廊下の方を向いて待つて居たのだらう。其處へ前から來て喉笛を掻き切れば、下手人げしゆにんは身體一パイに反り血を浴びなきやならない。