三和土たゝき)” の例文
いやな色だ、何んだ。」と湯村は行也いきなりその髪油の壜を取つて流しに投付けた。三和土たゝきになつてる。ひどい音して粉々に壊れた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
『それ其處にバケツがあるよ。それ、それ、何處を見てるだらう、此人は。』と言つて、三和土たゝきになつた流場の隅を指した。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
細君が聲をしぼつたと同時に、足駄の足もとのしつかりしない三田は友達を支へ兼て二人は一緒に玄關の三和土たゝきの上へ倒れた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
暖簾を掲げた入口から、丁字形に階下の間と二階の階子段とへ通ふ三和土たゝきには、絶えず水が撒かれて、其の上に履物の音が引ツ切りなしに響いた。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
凍った空気を呼吸するたびに、鼻に疼痛を感じながら栗本は、三和土たゝきにきしる病室のドアの前にきた。
氷河 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
格子かうしうち三和土たゝきで、それが眞直まつすぐうらまでけてゐるのだから、這入はいつてすぐ右手みぎて玄關げんくわんめいたあがぐちあがらない以上いじやうは、くらいながら一筋ひとすぢおくはうまでえるわけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしには一寸努力の要することだつた。……汽車の発着のない火点ひともごろの構内で、ガランとした三和土たゝきの上に立つて、何かこれでもう考へ落した事はなかつたかと思つて見た。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
暖簾のれんを掲げた入口から、丁字形に階下の間と二階の階子段とへ通ふ三和土たゝきには、絶えず水がかれて、其の上に履物の音が引ツ切りなしに響いた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
梅田の驛前の旅人宿に一時の寢所ねどころを定めたが、宿の内部の騷々しさに加へて、往來を通る電車のきしり、汽車の發着毎にけたゝましく響きわたる笛の、人聲と穿物はきもの三和土たゝきにこすれる雜音などが
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
善哉ぜんざい屋の筋向うにある小粹な小料理屋の狹苦しい入口から、足の濡れるほど水を撒いた三和土たゝきの上に立つた。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
善哉屋の筋向うにある小粋こいきな小料理屋の狭苦しい入口から、足の濡れるほど水を撒いた三和土たゝきの上に立つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)