三井みつい)” の例文
番町の火は今や五味坂ごみざか上の三井みつい邸のうしろに迫って、怒涛どとうのように暴れ狂うほのおのなかに西洋館の高い建物がはっきりと浮き出して白くみえた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三井みついの絹店の店頭では、女たちが反物をひろげ、店員は「極度ののろさと真面目まじめさと鄭重ていちょうさ」とで、それに接している。
日本のこころ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「あの男は三井みついへ入ったよ。とても大きなところへ入るような腕はないんだが、手引があって裏門から入ったんだね。もう一人蟇公がまこうって男がいたろう?」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
中村は今ベルリンの三井みついか何かに勤めている。三重子もとうに結婚したらしい。小説家堀川保吉はある婦人雑誌の新年号の口絵に偶然三重子を発見した。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いざとなると容赦ようしゃ未練みれんもない代りには、人にって取り扱をかえるような軽薄な態度はすこしも見せない。岩崎いわさき三井みついを眼中に置かぬものは、いくらでもいる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると、魚屋のいうのには、京都の三井みついさんの注文で、鮎の洗いをつくったこれはあらだという。
鮎の食い方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
ちっと気を大きくして山気やまきを出せ、山気を出せ、あんなけちけちした男に心中立て——それもさこっちばかりでお相手なしの心中立てするよりか、こら、お豊、三井みつい三菱みつびし
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
昔、三井みついであったか、鴻池こうのいけであったかのお嬢様が、ある時、述懐して言うことには
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
岩崎三井みついにも少々融通してやるよう相成るべきかと内々ないない楽しみにいたしおり候
初孫 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
構うことあ無えやナ、岩崎いわさきでも三井みついでもたたこわして酒の下物さかなにしてくれらあ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御一新の御東幸の時にも、三井みついの献金は三万両だったが八兵衛は五万両を献上した。またどういう仔細があったか知らぬが、維新の際に七十万両の古金銀を石の蓋匣かろうどに入れて地中に埋蔵したそうだ。
駿河町するがちょう三井みついに通っております」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三井みつい三菱みつびしを除けば日本ではまあ彼所あすこ位なもんですから、使用人になったからといって、別に私の体面に関わる事もありませんし、それに仕事をする区域も広いようですから
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「細井君のところは三井みつい様のご家来らしいです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なるほど、三井みついが賞味したわけだと合点がてんした。
鮎の食い方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
三井みついです。三井はもっとうまいんですがね。この絵はあまり感服できない」と一、二歩さがって見た。「どうも、原画が技巧の極点に達した人のものだから、うまくいかないね」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と三輪さんは三菱みつびし三井みついも差別がない。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)